ATMの詳細

このページは読み応えがあるので最初に目次を作りました。でも最初からじっくりと読んでいただけると嬉しいです。

目次

 概要.

    日常生活効果

    スポーツ効果

教師の役割

レッスンの必要事項

レッスンの流れ

レッスンの構成と所要時間

簡単なレッスン例

レッスンの特徴

    片側レッスン

    気づき

    努力の排除と痛み

      ストレッチしない

    休憩の重要性

    分化と非分化の動き

    呼吸

    眼とあごと舌

    正しさの排除

    骨格を通して動きを伝える

    鍛えるのは脳神経系だ

    動きに興味がなくなったら効果なし

    ルールの無いことがルール.

    リバーシブルな動き.

    床は偉大な教師

レッスン効果を持続するための注意.

レッスン効果.

改善はどのようなプロセスを通るか

ATM録音

 

 

概要

 

 

教師(インストラクター)は約45分間のATMクラスを言葉で導きます。生徒は他人のまねをせずに自分の理解で自分の身体がしたがるような動きを目指します。従って生徒個人によって動きに微妙な違いが出来ます。教師は大きな過ち以外は矯正しません。


ほとんどのレッスンは「マットを敷いた床の上」で行い、たまに立位や椅子に座って行います。床に寝て動きをすると坑重力筋の影響を排除できるのです。

 

動きは時に複雑になるので、知能は必要ですが力は必要ないので特に「成人や老人にはぴったり」です。

 

日常生活効果

 

日常動作を普段とは違った姿勢で学習する場面が沢山あり、このレッスンで学習した動きは無意識のうちに普段の暮らしに役立ちます。腕を伸ばす、座る、起き上がる等がとても楽になってきます。

 

スポーツ効果

 

同時にATMでの動きはダンスやスポーツにおける動きの要素を取り出しているので、あらゆるスポーツ、ダンス、演劇、音楽にも役立ちます。

 

教師の役割

 

ATMは生徒自らの「発見の旅」です。発見する(気づく)のは生徒自身ATMであり、教師はあまり教えません。

 

教師は生徒が自ら発見しやすい環境作りをするだけです。教師はむしろガイドに近い存在です。

 

教師は言葉で動きを指示するだけで(エアロビ インストラクターとは違い)教師自身は動きを行いません。生徒が自分で教師の言葉の指示を理解した上で、自分の身体に適切な動きを身に付けてもらうのが主旨です。

 

加えて教師は生徒の学習と安全を確保するために細心の注意をクラス全体に払う必要があるからです。生徒の学習具合によって、教師はレッスン内容を途中で変更することもあります。 

 

時には特定の生徒を例に取り、動きの改善の個人指導を行うこともあります。この場合にはFIのように生徒に触れることもあります(ただし触れられるのがいやな生徒には触れません)

 

レッスンの必要事項

 

ATMで必要なものは床に敷くマットと枕代わりのタオルだけです。床に長い間寝転がるときには枕があると楽です。特に長時間横向きになるのはつらい方が多いです。私の家で行うレッスンではなにも持参する必要はありません。こちらですべて用意してあります。

 

生徒の服装は緩やかな普段着か運動着が最適です。上は長袖、下は長ズボンが適切です。ATMではほとんど汗をかくような激しい動きはありませんので、短パンやエアロビ ウェアーだけを着けて床の上で長い時間を過ごすと寒さを感じるかもしれません。ATMでの目的は余分な筋肉努力を無くすことですから、発汗は最小限に止まります。

 

ATMでは生徒自身に耳を傾ける必要があるので音楽やアロマなどは使わずにとても静かな環境で行います。

 

レッスンの流れ

 

 

(大抵のレッスンでは)生徒はまず床に仰向けになり、身体の状態を自分で感じ取ります(スキャニング)。その後で実際の動きを行い、また最後に仰向けで違いを感じ取ります。身体の緊張がほぐれると床との接触に大きな変化が起こります。

 

レッスンの種類は一生かかってもやり終えないほどあります。簡単なものから、とても複雑なレッスンまでバラエティーに富んでいますが、私はとても基礎的なレッスン(身体を曲げる、捻る、回転するなど)から始めるのが通常のやり方です。

 

レッスンの構成と所要時間

 

 

私の体験と既存のレッスン記録書をもとにして、私が再構成してレッスンを作ります。時間は約45分間を予定していますが、動きの前後のスキャニング時間を含めると一時間レッスンとするのが適当だと思われます。ただしレッスン内容や生徒の具合によっては多少短め、あるいは長めにする場合があります。これは生徒の安全と学習を確約するために必要ですのである程度は私の裁量に任せて下さい。

 

レッスン内容は毎回違います。時には生徒からのリクエストに答えることも出来ます。例えば「あごのレッスンをして欲しい」「ボイスレッスンをしてほしい」などに答えられます。

 

レッスンに連続性を持たせることも出来ます。例えば脚の動きを異なった内容のレッスンで数回続けるなど。フェルデンクライスでは歩くことに力を入れています。この場合複数回のレッスンが出来れば色々な歩きを体験できます。

 

またこのような数回の連続レッスンを行う場合、セミナー形式にすることも可能です。

 

簡単なレッスン例

 

簡単なATM(肩のレッスン)を試してみよう。

1.         (身体のほぐれ度チェック)仰向けになりましょう。何もしないで下さい。身体の左右を比べましょう。つま先の方向は左右対称ですか? 左右のかかとと床との接触はどうでしょう?膝の床からの距離は左右で同じですか?骨盤の左右はどうでしょうか?どちらか一方へ傾いていませんか?左右の腰の隙間は床からどのくらいありますか?肋骨の当たりはどうでしょう? 首は床からどのくらい離れていますか?床に付いている後頭部は頭の中央ですか、それとも左右どちらかに傾いていますか? 左右の腕の床への付き具合に違いはありますか?

2.         休んで。

3.         ではゆっくりと横に転がって立ち上がり、椅子に楽に腰掛けてください。

4.         (改善基準の動き)右肩を少し持ち上げて戻し、足の方へ下ろす。腕は楽にしたままで。首、胸、背中を楽にして。呼吸も楽に。右の脇が長くなったり短くなったり、左の脇が長くなったり短くなるのに気付いて。全ての動きは小さく、ゆっくりとします。力は決して入れない。

5.         休んで。

6.         (頭と肩の非分化の動き)今度は右肩を持ち上げるときに、一緒に頭を左へ少し倒します。右肩と右耳が一定の距離を保つようにしたままで元の位置へ戻り、さらに足の方へ下げます。繰り返して。頭は回転しないで単に横へ倒すだけ。従って鼻はずっと正面向きです。左肩は何をしていますか?

7.         止めて、頭を真っ直ぐに戻して。
(改善基準の動き)最初の動きに戻って、右肩だけを上げておろします。最初より楽ですか?

8.         休んで。 

9.         (頭を左で肩との分化の動き)頭を左へ倒したままで停止し、その状態で右肩を上下します。小さく、力を入れずに。繰り返して。

10.     止めて、頭を真っ直ぐに戻して。
(改善基準の動き)最初の動きに戻って、右肩だけを上げておろします。最初より楽ですか?

11.     休んで。 

12.     (頭を右で肩との分化の動き)今度は頭を一旦右へ傾けてとめておきます。そのままで右肩を上下します。

13.     止めて、頭を真っ直ぐに戻して。
(改善基準の動き)最初の動きに戻って、右肩だけを上げておろします。最初より楽ですか?

14.     休んで。左右の肩の感じを感じ取りましょう。レッスンの初めとはどんな違いがありますか。

15.     仰向けになって頭を小さく楽に左右に転がしましょう。こうすると身体全体が統合されます。

16.     止めて。

17.     床との接触感は最初と比べてどう変化したでしょうか?

 

プチATMレッスン、ご苦労様でした。このレッスンは立位でも、床に仰向けでも、横向きでも出来ます。それぞれで効果に違いが出ます。右側だけで行ったレッスンが左側にどんな影響を与えるか感じ取ってください。そしてしばらくしてからその影響にどんな変化が出るか。

 

レッスンの特徴

 

簡単なレッスンを体験したので、ここでレッスンのエッセンスや原理をお話しましょう。

 

片側レッスン

 

ATMではときどき片側だけのバランスの崩れたレッスンをします。普通の運動指導では必ずバランスを取るように指導しますが、フェルデンクライス博士はバランスは脳神経系に任せておけば自然に取れると考えました。言い換えるとバランスは取るものでなく、それを障害するものが無ければ「取れてしまうもの」なのです。

 

前記の「肩のレッスン」を例に取ると、右側だけの肩の動きをしただけで終えています。するとレッスンの最後には右側の動きが改善されます。しかし左右の差を感じ取る訓練を重ねていくと脳神経系は右の良い動きを自然に左側に転写(心理学では転移と呼ぶ)することが出来るようになります。とても不思議はことですが本当です。

 

別の例では、身体が右に傾いている人がいたら普通は真っ直ぐになるように矯正しますが、フェルデンクライスでは逆にもっと右へ傾けてあげます。それまでは自分が右へ傾いていなかった事を認識していなかった脳神経系は、さらに傾きを増やされたことで(無意識な)気付きが起こり、自然に真っ直ぐになるのです。

 

ただし身体の一部が硬くて、真っ直ぐに戻らない場合(何らかの障害が考えられる)はその硬さをレッスンを通して解除していく必要があります。

 

気づき

 

レッスン中は自分の「気づいていること、いないこと」が問題とされ、普通の運動のように動きの大きさや速さにはあまりこだわりません。たまには大きな動きもしますけどね。むしろ「気づこう」と思うと動きを小さくしていく場合があります。「小さくてもスムーズな動き」をめざします。

 

努力の排除と痛み

 

決して痛みを努力で乗り越えようとしない。痛みはあなたの身体が別の動き方を発見して欲しいという信号です。無理な姿勢だと感じたら、それに近い姿勢で楽な姿勢を考案します。

 

それでも無理ならイマジネーションだけで行います。イマジネーションでの動きは現在ではアスリートの間で「メンタルトレーニング」として取り入れられています。それでも痛みがあったら完全に休みます。

 

多くの運動でおこるような痛みや無理が生じるようなら、動きのやり方を間違えていることになります。レッスン中に動きの誤りに気づければそれが、やがて普段の動きの誤りへの気づきにつながるかもしれません。

ただし誤りといってもフェルデンクライスでは「こう動かなくちゃいけない」というのはあまり言いません。ここでの誤りは自分で「こう動きたい」という意図と、「実際にしている動き」が違っていることを意味しています。誤差と言い換えた方が良いかも知れませんね。

 

ヨガのような「無理な姿勢はとりません」し多くのダンスレッスンにあるような「無理なストレッチもしません」。レッスン中は自分をいかに「心地よく」できるかが重要です。そのためにマット(や出来れば枕)を使います。身体のどこかに無理したり力を入れていたら身体の状態を感じ取ることが難しくなるからです。

 

ストレッチしない

 

 

筋肉をストレッチしません。通常ストレッチは脳からの指令に矛盾する行為で病的とさえいえます。

1.         もし筋肉が最善の状態にあれば、とても柔らかくなっているはずなのでストレッチする必要はありません。

2.         もし筋肉が硬くなっていたら、硬くなれという指令が系統発生の古い脳から出ていて保護しているか(不随意で本人はそれに気付かないが)

3.         過去にあった怪我や心理的な原因で固めて保護している状態の名残です(不随意で本人はそれに気付かないが)。もう固めておく必要が無かったら縮めという脳指令を解除すればよいのです。もしこの状態で無理にストレッチすると何が起きるでしょう。付随的な古い脳は縮めろ、随意的な新しい脳は伸ばせ(本人はこちらの指令には気付いている)と指令を出したら脳神経系は混乱をきたし、神経疲労と筋肉破壊が起きます。この状態が増大すると「ふるえ」が見えます。

 

休憩の重要性

 

 

ATMでは沢山の「休み」をとります。この「休み」の間に心身に起こった変化を感じ取ります。「休み」はレッスンの大切な一部です。特に身体の左右の差、レッスンの最初と最後の違い、一つの動きをする前と後との違いを感じ取ることに重点を起きます。 休みは教師が指示する以外にも、自分で必要と判断したときに必要なだけ取ります。生徒によっては動きの途中に意図せずに眠りに落ちる人もいます。それで結構です。


短い休みは一回、一回の動きの後でも取ります。例えば単に腕を伸ばす動きをして戻す。次の動きをする前に軽く一息入れます。動きを連続して行うと完全に力を抜け切れないことがあるからです。筋肉制御は力を入れることと抜くことを交互に学習する必要があるからです。



たくさん休みます。休みの間に身体が動きを覚えます。動きが脳神経系に刷り込まれます。いつ休むかは生徒自身で決めて下さい。これは実生活においても、とても重要な判断能力を養っています。疲れたら休みましょう。疲れなくても休みましょう。教師の指示を待つ必要はありません。

 

分化と非分化の動き

 

 

身体の各部分を「分化」する動きを沢山行います。分化とは身体の各部分を個別に動かすことです。例えば目と顔を逆方向へ動かしたりします。骨盤と胸郭を互いに逆方向へ動かします。その後で全体の動きを統合する動きをします。大抵は同じ方向への動きです。すると身体全体が効率的な組織化をするようになります。前記の「肩のレッスン」にもこの原理が使われていますね。

 

一部の関節だけが大きく動き、その他の部分があまり動かないと、大きな動きが起こった関節部分に負担がかかることになります。

 

呼吸

 

 

呼吸に注意します。「呼吸」が乱れる瞬間 、止まる瞬間は動きに困難がある瞬間でもあります。呼吸が乱れないように動きましょう。乱れたらそのことに気づきましょう。
フェルデンクライス博士は呼吸について我々ができるのは、自然な呼吸を邪魔しないことだけだと考えました。

 

眼とあごと舌

 

 

「目の動き」はとても重要です。なぜなら人が何かをするときには 、ほぼ必ずその方向を向くからです。スムーズな目の動きに注意します。でも力は入れません。

「あご」を緩めます。あごを固めていると特に首に負担のかかる動きになります。
「舌の位置」に注意します。緊張すると舌の動きが停止することがあります。

ATMでは眼、あご、舌の動きに特化したレッスンもあります。

正しさの排除

 

 

「正しくやろう」とはしません。あなたにとって「正しいこと」とはどんなことでしょう。「教師の指示通り」が正しいことですか?「あなたの心身にやさしいこと」が正しいことですか?

「うまくしよう」、「成功しよう」とはしません。成功しようとして失敗したときにはどんな気持ちになるでしょう?その結果は「劣等感」を強めてしまうばかりです。

求めているのは「柔軟な身体でなく、柔軟な頭脳です」。どうぞばかげた失敗を沢山して下さい。失敗こそ学習の根幹です。失敗をしない人はたった一つのやり方を「正しいやり方」と考えます。このようにとらわれている限りいつまでも何も変化はおきないでしょう。でも失敗は小さな失敗にとどめて起きましょう。失敗に早く気付くためにこのレッスンを通して感覚を鍛えましょう。

動きがどうあるべきか(スタイル、形式、カッコ)なんて事を気にして、うまく動こうとしないで下さい。どうもうまく動けないと思ったら、もっと 下手にやってみよう。わざと下手にやってみると下手にする方法に気づきます。すると変化が訪れます。沢山の失敗が動きのパターンへの気づきをもたらします。

身体のある部分を動かすと別の部分が反応して動きます。この反応の動きに注意を払いましょう。するとこの反応の動きを変化させることができます。でも「正しい」動きに執着し失敗を恐れていると新たな変化が起きにくくなります。

 

骨格を通して動きを伝える

 

 

身体のある部分から始まる動きを、骨格をとおして他の部分へと伝達していくイメージを持とう。筋肉を通してではなく。すると動きをしながらも必要のない緊張が解けてきます。

筋肉の性質として覚えておく必要があるのは「ひも」と似ていることです。コップにひもの片端を結びましょう。反対側の端を引いてみてください。コップは動き出すでしょう。今度は逆に押してみましょう。ひもはたるんでしまうだけでコップは動きません。筋肉も引くことしか出来ません(収縮のみ)。従って押すという動きは硬い「骨格」を通してのみできるのです。 ひもと違い、骨は押すことも引くことも出来ます。

 

鍛えるのは脳神経系だ

 

 

ATMは一般的な運動と似た動きをしても、やり方がとても違っています。例えば仰向けで両腕を頭の後ろで組んで頭を持ち上げるのは一般的な腹筋運動ですが、ATMでは両腕の力を使って、腹筋を出来るだけリラックスした状態でします。私たちが鍛練しているのは筋肉そのものではなく「ある筋肉を動かせ(収縮する),別の筋肉は動かすな(収縮するな)」という司令を出す脳神経系です。

 

動きに興味がなくなったら効果なし

 

 

慣れて興味をそがれてしまった動きはいくら繰り返しても脳神経には変化を起こしません。そういう時は動きをいったんやめてしまうことです。休んでから再度動く。休んでいるあいだに脳に何かが起きます。飽きさせないためにフェルデンクライス博士は沢山のレッスンを作りました。

 

ルールの無いことがルール

 

 

私が申し上げた事も含めて決して何も習慣化しないで下さい。時々その原則も破ってみましょう。破ってみるとその違いに気づきます。フェルデンクライスの重要なルールの一つが「ルールが無いことがルール」です。

 

リバーシブルな動き

 

 

リバーシブルな動きとは、動きの途中でいつでもすぐさま停止し、逆方向へ動くこともできるし、同じ方向へ再度向かうこともできるし、楽に停止したままでもいられることです。

 

床は偉大な教師

 

 

身体と床との接触点の圧力がスムーズに変化していくように動きをしよう。床から身体について沢山のことを学習できます。

 

レッスン効果を持続するための注意

 

 

ATMの直後は激しい動きをしないで下さい。重いものを持たないで下さい。身体がとても柔軟になっているので怪我しやすいのです(フェルデンクライス レッスン後のリラックス感はとてつもなく深くなる場合があります)。また習慣的な動きへ戻りやすく、新しく身につけたレッスンの効果を失わせてしまいます。

 

レッスン効果

 

 

レッスン効果については当然興味をお持ちだと思いますが効果はとても多岐にわたり、広く言えば人生全体に大きな影響を与える可能性があります。例えば数ヶ月間ATMを受け続けた小学生は学業成績が向上したという実験がヨーロッパでは報告されています。

ここでは「スポーツ、ダンスの改善」に絞って説明します。

 

改善はどのようなプロセスを通るか

 

 

例えばエアロビの「V字ステップを改善したい」という課題をフェルデンクライス教師が与えられると教師がすることは、

1.        生徒のV字ステップを観察する。

2.        つぎにこの動きを幾つかの身体動作に分解し、分解されたどの動きを改善するとV字ステップが改善するかを考えます。例えばV字ステップをする時に右足から踏み出し、それに合わせて右手を前方上へ振り上げ、次いで左脚を前へ出しながら左腕を振り上げる。このとき例えば、最初に踏み出した脚は十分に前へ出るが、左脚が十分に前へ踏み出せなかったとしたら、フェルデンクライス教師なら例えば左半身は体重を十分に支えていないので踏み出した途端に足が床に落ちるのではないだろうか(一般の歩行を見るとこういう人は沢山います)と考えます。

3.        その改善には、一般のエアロビ教師なら筋肉を使い足が床に落ちないように指導する(左体側を強くして)でしょうがフェルデンクライス教師なら、例えば左体側を伸ばすATMレッスンを採用します。その一例が最後にある椅子に座って出来る「肩のレッスン」です。

でもひょっとするとこの生徒のあごに問題があるかもしれません。その場合は「あご」あるいは「舌」のレッスンを選択します。 

 

もちろんATMレッスンは特定の生徒の課題に答える形ではありませんので、この逆のプロセスとなります。すなわち「肩のレッスン」(あるいは「あご」、「舌」のレッスン)を行うと知らず知らずのうちにこのようなV字ステップの不具合が改善されるのです。 

 

ただし生徒は受けたATMレッスンとV字ステップの改善の関連性について気付くことは滅多にないでしょう。最終的な動きの改善は無意識に起こるからです。(積極的に)改善 「する」というよりも改善は(受動的あるいは自然に)「起こる」という方が近いのです。


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